【経済の話】<企業の情報開示>コメント、具体的に 東証が指導

<企業の情報開示>コメント、具体的に 東証が指導

毎日新聞 5月25日(日)11時3分配信

 経営統合や増資など重要な企業情報を発表前に報道された際の企業の情報開示が、以前より具体的な内容に変わりつつある。従来は「当社として発表したものではない」など肯定も否定もしないコメントが大半だったが、最近は「検討している」などと事実上認める企業が増加している。東京証券取引所が踏み込んだ開示を国内上場企業に求めてきたためだ。東証は6月から、企業が報道に関するコメントをすぐに開示しない場合は投資家に注意を呼びかけるなど、投資家保護を強化する。【鈴木一也】

 株価に重大な影響を与える経営統合などが正式発表前に報道された場合、東証は投資家が正確な情報に基づいて取引できるよう、その株の売買を一時停止して企業に事実かどうか開示を求める。しかし、企業は情報が明らかになることで株価が急騰して買収費用が膨らむことなどを警戒し、あいまいな説明にとどめるのが半ば慣例化していた。このため、投資家は不明確な情報をもとにした取引を余儀なくされていた。

 情報開示が変わるきっかけになったのが、昨年4月、川崎重工業三井造船の統合交渉が報じられた際、川重側が「事実はない」と否定したにもかかわらず、約2カ月後に「事実はある」と訂正した問題。東証は「結果的に投資家に誤った情報が与えられた」として、統合や増資が報じられた企業に対し、業務拡大や資本増強についての考え方など、可能な限り具体的に現状を説明するよう指導を始めた。

 その結果、昨夏ごろから踏み込んだ内容のコメントが増えてきた。昨年9月に増資報道が出たシャープは「公募増資や資本提携に係る交渉など様々な検討を行っております」と検討を認めた。今月には、マルエツなど傘下スーパーマーケットの再編を報じられたイオンが「提携関係の一層の強化に向けた検討を行っております」と事実上認めるコメントを出した。どちらも当日中に正式発表している。

 情報開示までに時間がかかったり、やむを得ない事情で具体的な情報が開示できなかったりする場合には、東証が6月からホームページなどを通じて投資家に「不明確な情報が発生している」と注意を促す。開示に時間がかかる企業に、より強く情報開示を求める狙いもある。

 大和総研の吉井一洋制度調査部長は「企業が最適な開示内容を考えるようになってきたことは意義がある。望ましい事例を積み重ねて、より正確な情報に基づいた投資環境を作っていく必要がある」と指摘する。


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