【経済の話】自衛隊員の命守る“熟練のワザ”の戦闘服、製造工場を初公開

自衛隊員の命守る“熟練のワザ”の戦闘服、製造工場を初公開

産経新聞 7月28日(月)10時0分配信

自衛隊員の命守る“熟練のワザ”の戦闘服、製造工場を初公開

陸上自衛隊が使用している戦闘服=大阪府島本町の大阪染工(写真:産経新聞)

 自衛隊の戦闘服などを製造しているユニチカグループが、染めの工程を手掛ける子会社「大阪染工」(大阪府島本町)の工場を初めて報道関係者に公開した。赤外線による探知を難しくする加工など日本の繊維産業が誇る先端技術が注ぎ込まれており、熟練の職人たちが国を守る自衛隊員の活動を支えていることが分かった。(栗井裕美子)

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■すべての球を“ストライク”に

 戦闘服は、周囲の目を欺く目的から高度な技術が必要となり、国内では3社しか製造できない。ユニチカグループは年1万5千〜2万着を供給しており、防衛省が求める基準より高い合格ラインを自主的に設定。工場が公開された今月23日、石井寛・捺染(なせん)工務部長は「すべての球をストライク(合格)にする」との意気込みで職人たちは作っていると語った。

 生地には、耐火性に優れた「難燃ビニロン」という素材を配合しており、摩擦や汗に強い染料「スレン」を使用している。いずれも変色しやすい特性があるため、でき映えが最後まで分からないのが難点という。

■頑固なまでのこだわり ずれは0・25ミリ以内

 1色でも難しい染めは緑色に染めた生地の上に、さらに3色の迷彩柄をプリントする。赤外線カメラでも判別しにくくするため染料の光の反射率に細心の注意を払う。

 反射率は、生地の産地や製造時の天気で変わるなど不確定要素は尽きない。それでもユニチカグループが手掛けた生地の合格率は98%を誇る。工程ごとに検査し、経験則から独自に編み出した数値と照合しながら慎重に作業を進めるからだ。

 戦闘服は、茂みの中などで、姿を紛らわせることができるような迷彩柄が研究されており、綿密な計算のもとデザインされている。このため、注文通りに作ることが重要で、工場では染めの型と生地の位置を事前に確認し、ずれは0・25ミリ以内にとどめる。着る人の命を左右する可能性があるだけに、国内の市販品の許容範囲とされる0・5ミリより厳密で、「頑固なまでのこだわり」(石井氏)と胸をはる。

■世界トップレベルの繊維技術詰め込んだ戦闘服

 ユニチカグループは長崎県岡山県の工場で紡績を手掛け、大阪府などの工場で織布と染色。北海道の工場などで縫製するなど役割分担しながら戦闘服の製造を国内で完結させている。

 技術情報の流出を防ぐため、いくらコストが安くても海外生産はできない。このため大阪染工の工場では熱効率のいいボイラーを導入したり、隣接する別企業の工場で不要になった熱湯を譲り受けて再利用するなど生産コストの削減に努力している。

 ユニチカグループの松永卓郎常務執行役員は「世界トップレベルの日本の繊維技術を戦闘服に詰め込んでいる。若い職人の教育に力を入れ、次世代に継承していきたい」と話している。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140728-00000507-san-bus_all
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