【経済の話】アングル:期待先行のウエアラブル端末、普及に必要な「進化」

アングル:期待先行のウエアラブル端末、普及に必要な「進化」

ロイター 1月12日(日)13時55分配信

アングル:期待先行のウエアラブル端末、普及に必要な「進化」

1月9日、米ラスベガスで開かれた世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で、ウエアラブル端末が大きな注目を集めた。写真はソニーの新型スマートウォッチ。7日撮影(2014年 ロイター/Steve Marcus)

[ラスベガス/シンガポール 9日 ロイター] -米ラスベガスで開かれた世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で、今年大きな注目を集めたのがウエアラブル端末。メッセージをチェックできる腕時計型端末や動画を撮影できる眼鏡型端末など、さまざまな製品が披露された。

しかし、会場を回った多くの業界幹部やアナリストらの見方によれば、現在提供される製品のデザイン性や価格、機能を考えると、消費者がすぐに飛びつくことはなさそうだという。

今回展示されたウエアラブル端末のほとんどが、利用者にとって独創的だったり魅力的といえるメリットに欠け、技術を新たな端末に詰め込んだだけの下手な試作のようだといぶかる声もある。

会場でフィットネス用バンドや時計などのウエアラブル機器をカメラに収めたという調査会社バーンスタインのアナリスト、ステーシー・ラスゴン氏は、「20枚の写真を撮ったが、どの製品がどの会社のものか区別できない。みんな同じに見える」とコメント。ウエアラブル端末は素晴らしいアイデアだが、まだ多くの実験が必要だと語った。

ソニー<6758.T>、韓国サムスン電子<005930.KS>、米クアルコム<QCOM.O>は、それぞれ新型や最近発表したスマートウォッチを披露。多くが携帯電話との連携型で、メッセージや予定を確認できるものだ。また、運動量などを記録できることで人気の「Fitbit」のようなリストバンド型も数多く見られた。

インテル<INTC.O>のマイク・ベル副社長は「ウエアラブル端末が注目に見合うためには、真の解法が必要だ。それは技術の問題ではなく、その技術でこれまでにできなかった何が可能になるのかということだ」と強調した。

同社は6日、心拍数を計測できるイヤホンの試作品を発表。また、スマートブレスレットの開発で米百貨店バーニーズ・ニューヨークと提携することも明らかにした。

業界がこぞってウエアラブル端末に熱狂する背景には、スマートフォンタブレット端末市場が鈍化している状況もある。2013年に39%拡大した世界のスマホ市場だが、調査会社IDCによると、今後4年間の成長ペースは年間18%に鈍化し、価格も徐々に下落すると予想されている。昨年は54%伸びたタブレット端末出荷も、今年は22%増に減速する見通しだ。

IT企業の幹部らは、多くの消費者がウエアラブル端末の可能性に興味を抱いているが、慎重でもあると指摘する。調査会社のヤンキー・グループが昨年12月に行った調査では、フィットネス用端末に200ドル以上出すと回答した人は10%以下。

また、クラウドサービスのシトリックス・システムズが委託し、ウェイクフィールド・リサーチが行った昨年11月の調査によると、91%がウエアラブル端末に高い興味を示したものの、61%が購入予定がないと答えた。

ウエアラブルカメラを製造する英OMGライフのサイモン・ランダール氏は、当時勤めていたノキア<NOK1V.HE>が10年以上前にカメラ付き携帯を発表したものの、反響はいまひとつだったと振り返る。同氏は「新しいものが多くの人に受け入れられるには時間がかかるが、その中にメリットが備わっていれば、いずれ広まっていく」と話す。

<進化に向け注目される企業・製品>

ウエアラブル端末の中でこれまでに最も売れているのは、サムスンが約300ドルで販売するスマートウォッチ「ギャラクシーギア」だが、利用者の評価は芳しくない。9月の発売から2カ月で80万台が出荷されたが、数百万台というスマホの販売台数に比べると、見劣り感は否めない。

一部の専門家は、これまでの実績からすると、ウエアラブル端末の人気を押し上げる製品を生み出す最有力候補は米アップル<AAPL.O>だと期待する。

調査会社カンター・ワールドパネルのアナリスト、キャロライナ・ミラネシ氏は、「2014年はヒット商品の年というより、試行の年になる。多くのメーカーは、アップルがどう出るかを見極めることになるだろう」と予想する。

明らかな勝者に欠けたCESだが、かなり魅力的で、観衆を惹きつけた製品もあった。エプソン<6724.T>が約700ドルで売り出す眼鏡型端末は、目にしている物体のデータを同時に見ることが可能。ソニーが発表した眼鏡型のプロトタイプは、キャプションのほか視聴中のテレビ番組情報を表示することができる。

一方、今や「ウエアラブル端末革命」を推進する最大の企業の1つとなったクアルコムはスマートウォッチ「Toq」を手掛けるが、クリアすべきハードルが高いことも認める。

同社のスマホ向けプロセッサ「Snapdragon」の設計を統括するラジ・タルーリ氏は、同プロセッサを時計型端末などにも搭載し、さらに洗練された機能を実現させたいと語る。

タルーリ氏は、そのためにプロセッサの電力消費量を桁違いに減らすことが欠かせないとし、「ウエアラブル端末に今期待されているのは、毎日充電する必要がないという以上のこと。利用する人は何週間も身に付けられることを望んでいる」と課題を示した。

(原文:Noel Randewich、Jeremy Wagstaff、翻訳:橋本俊樹、編集:伊藤典子)


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140112-00000012-reut-bus_all
※この記事の著作権は、ヤフー株式会社または配信元に帰属します