【経済の話】<外資参入続々>公共インフラへ 成長戦略で政権が後押し 

外資参入続々>公共インフラへ 成長戦略で政権が後押し 

毎日新聞 12月29日(日)11時26分配信

 大阪府南部の泉北高速鉄道などを運営する府の第三セクターの株式を米ファンドに売却する議案が今月、府議会で否決されたが、公共インフラへの外資参入は各地で相次いでいる。来年にも予定される関西国際空港大阪府泉佐野市)の運営権の入札にも外資が関心を寄せる。成長戦略の一環で外資参入に前向きな政府に対し、住民や地元経済界には「短期的な営利を追求する外資」への懸念は根強い。【熊谷豪】

 ■進む外資参入

 関空運営権の売却は1兆円を超える大型入札だ。空港民営化は海外では進んでおり、ノウハウのある外資が参入するとみられる。国土交通省航空局は「安全保障上の観点から選定には関与する。ただ、空港の所有権まで譲渡するわけではない」と、意に介さない。

 観光有料道路「箱根ターンパイク」(神奈川県小田原市)は2004年から豪銀行が経営し、愛知県も有料道路の民営化を目指している。松山市は水道事業のうち施設保守をフランスの水道会社に12年から委託している。

 ■政権は推進

 安倍内閣は13年6月、空港や上下水道、有料道路などの民間開放を目指す「日本再興戦略」を閣議決定した。5月の参院決算委員会では、鉄道事業への外資参入規制を求めた民主党議員に太田昭宏国交相が「対内投資の促進という観点も踏まえて幅広く議論する」と答え、規制に否定的な考えを示した。

 大阪府・市も熱心だ。泉北鉄道の民営化を決めたのは知事時代の橋下徹大阪市長大阪維新の会代表)。橋下氏は、こうした手法で得た利益をインフラ整備に充てる「ストック(資産)の組み替え」を掲げ、市営地下鉄やバス、水道の民営化も目指す。大阪府幹部は「公共インフラは安定した収益が見込め、投資側の関心も高い。眠っている金を回し、活性化につながる」と期待する。

 ■地域で摩擦も

 摩擦も生じている。東京都と埼玉県を走る西武鉄道を運営する西武ホールディングスを巡り、筆頭株主の米投資グループが持ち株比率の引き上げ方針を今年3月に発表すると、鉄道網維持を求める住民の署名運動に発展した。水道を委託する松山市はホームページに「水道料金が値上がりすることはありません」と掲載し、住民の不安払拭(ふっしょく)に努めている。

 府三セク株の売却議案の否決も、外資への不信が背景にある。公募では米投資ファンドローンスター」が最高値の買収額を提示。府は5年間の鉄道事業譲渡禁止を条件に盛り込み、「外資だから安全性を軽視する、ということはない」とも説明した。だが、南海電鉄との乗り継ぎ割引が小さいことに加え、5年後の転売への懸念も強く、ほぼ全野党が反対し、与党・維新からも4人が造反した。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131229-00000012-mai-bus_all
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